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kindle小説「ヤミノランド」1話無料公開

1  弥美子(やみこ)との出会い

美海(みう)はいつものように、後ろに結んだ紺色の髪を風になびかせながら学校の教室を出た。

 

美海は8歳の女の子で、東京にある姫嶋小学校に通っていた。

 

彼女の服装は、明るくて元気な性格を反映しているかのように、白いブラウスと赤いスカートで、

 

おばあちゃんからもらった可愛いキャラクターのお守りがいつも彼女の首に輝いていた。

 

だが、そのお守りが美海に与えるものは、ただの安心感だけではなかった。

 

それは彼女が持つ特別な力、霊を見ることができる能力と深く結びついていた。

 

最初は、美海はこの力を秘密にしていた。

 

しかし、ある日のこと、彼女が見えるはずのないものを見て反応してしまう場面を

 

クラスメイトに目撃されてしまった。

 

「美海、どうしたの? ぼーっと空を見つめて。」クラスメイトの一人が尋ねた。

 

美海は慌てて言い訳をした。

 

「あ、うん、ただ…鳥が飛んでるのかなと思って。」

 

だが、その言い訳は誰にも信じられなかった。

 

それからというもの、美海の目にはいくつもの不可思議な物が飛び込んでくるようになった。

 

それに応じて彼女の周りの態度は一変した。

 

耳打ちや遠巻きの視線が増え、かつて友達だと思っていた子たちも、美海から距離を置くようになった。

 

「霊なんて見えるわけないじゃん、変な子。」

 

そんな言葉が彼女の耳に届くたび、美海は心を痛めた。

 

孤独感は日に日に増していき、美海は学校での時間をどう過ごしていいかわからなくなってしまった。

 

昼休みになると、ひとり公園の隅でお昼を食べるのが日常となった。

 

彼女は一人でポツンと座り、ぼんやりと空を見つめながら、心の中でつぶやいた。

 

「なんで私だけがこんな力を持ってるの…。誰にもわかってもらえないよ。」

 

美海は学校でのつらい日々を抱えながらも、休みの日が来るのを心待ちにしていた。

 

なぜなら、その日はおばあちゃんの家を訪れる日だからだ。

 

おばあちゃんの家はいつも彼女にとっての避難所であり、心の安らぎを与えてくれる場所だった。

 

おばあちゃんとの時間は、美海にとって学校での苦しみを忘れさせてくれる貴重な瞬間であった。

 

「おばあちゃん、いる?」

 

休みの日、美海が静かに玄関で呼びかけると、おばあちゃんが優しい笑顔で出迎えてくれた。

 

「美海ちゃん、来てくれたのね。待っていたわよ。」

 

おばあちゃんは美海を暖かく抱きしめた。

 

美海はおばあちゃんの前に座り、学校での出来事を話し始めた。

 

「おばあちゃん、最近学校でちょっと…」と、心の内を打ち明ける美海。

 

おばあちゃんは美海の手を優しく握りながら言った。

 

「美海ちゃん、あなたが特別な子だから、時には理解されにくいこともある。

 

でも、あなたのその力が、きっと将来役に立つ時が来る。自分を信じて。」と励ました。

 

美海はおばあちゃんの言葉に心を動かされ、涙がこぼれ落ちた。

 

「でも、こんなに辛いなら、この力なんていらないよ…」

 

おばあちゃんは美海を抱きしめた。

 

「大丈夫…私がそばで支えるわ。」

 

と言葉をかけた。

 

その時、美海の視線が家の奥にある扉に留まった。

 

幼い頃、何度かその扉の前に立った記憶がある。

 

おばあちゃんに手を引かれて遠ざけられたあの部屋。

 

「そういえば…あの部屋は…?」美海が小さな声で尋ねると、おばあちゃんの顔色が変わった。

 

「あの部屋には入らないでちょうだい」

 

おばあちゃんの声はいつもの温かみがなく、厳しい口調だった。

 

美海は幼い頃の記憶とおばあちゃんの言葉を思い出しながら、扉から目を離した。

 

そして、毎回その部屋のことは忘れるようにしていた。

 

ある日、美海はいつものように朝礼で机に座っていた。

 

その時先生と一緒に一人の少女がドアから入ってきた。

 

彼女は、赤茶色の髪に白黒の服、紫のズボンをはいており、大人びた雰囲気をまとっていた。

 

名前を弥美子といい、静かな感じの女の子だった。

 

美海は独りぼっちだったので、特にその転校生に興味は湧かなかった。

 

休み時間になり、弥美子はクラスで浮いていた美海を見つけた。

 

そして美海の隣に静かに座り、穏やかな声で言った。

 

「ねえ、なんで一人でいるの?」

 

美海は驚いて彼女を見た。誰も自分に話しかけてくれることがなかったからだ。

 

美海は少し戸惑いながらも答えた。

 

「あ、うん…ただ、一人が好きなだけだよ。」

 

弥美子は微笑んで、美海の目をじっと見つめた。

 

「本当に? 私、美海ちゃんが特別なことができるって聞いたよ。」

 

美海は心臓がドキリとした。自分の秘密を知っているとは、どうして?

 

しかし、弥美子の目には好奇心や恐怖ではなく、純粋な興味と温かさがあった。

 

放課後、美海は勇気を出して弥美子に声をかけた。

 

「ねえ、一緒に帰らない?」弥美子は一瞬驚いたように美海を見たが、

 

すぐに静かな笑みを浮かべて頷いた。

 

「いいわよ。」

 

二人の友情はその日から急速に芽生え、放課後はいつも一緒に過ごすようになった。

 

ある日、彼女たちは近くの公園で猫と追いかけっこをして夕方まで遊んだ。

 

「ねえ、弥美子ちゃん、今日も楽しかったね!」

 

美海は笑顔で弥美子に言った。

 

「ええ、美海と一緒ならいつでも楽しいわ」

 

弥美子は微笑みながら答えた。

 

そして、ふと真剣な表情で付け加えた。

 

「美海、こんなに明るくて元気な子だったなんて、知らなかったわ。」

 

美海は少し驚いたが、すぐに嬉しそうに笑った。

 

「えへへ、ありがとう。弥美子ちゃんといると、なんだかいつもよりもっと元気になれるんだ。」

 

しかし、放課後の帰り道で予期せぬ出来事が二人を待ち受けていた。

 

公園の木々の陰から、突如として白い人影が現れたのだ。

 

その影はずっとこちらを見つめている感じだった。

 

美海は好奇心旺盛で、何でも直接見たがる性格だったが、弥美子は慌てて美海の目を覆った。

 

「見てはいけない」と弥美子は言った。

 

その声には恐れと警告が込められていた。

 

「あれって…」美海は不安と興味が交錯する中で尋ねた。

 

「あれは暗黒霊…あなたを狙っている敵よ」と弥美子は静かに答えた。

 

「あなたも見えるの?」

 

「ええ…そうよ」

 

「知らなかった…でもどうして弥美子ちゃんは暗黒霊ってわかるの?」と美海が尋ねたとき、

 

「私はあなたを奴らから守りに来たのよ…詳しいことはまた今度ね」と弥美子は言った。

 

二人は急いでそれぞれの家へと帰った。

 

美海は自室に入り、宿題に取り組んだが、集中できなかった。

 

夜が更けるにつれ、美海の心は不安でいっぱいになっていった。

 

彼女はベッドの上で紺色の髪を指でくるくると巻きながら、その日の出来事を思い返した。

 

「私はあなたを守りに来たのよ…詳しいことはまた今度ね」と弥美子が言ったあの言葉。

 

美海には、その意味がまだはっきりとは掴めなかった。

 

なぜ自分なのか、そして弥美子はどうしてそんなことを知っているのか。

 

疑問が次々と湧き上がる中で、彼女はただ混乱するばかりだった。

 

部屋の中は静かで、唯一聞こえるのは外の風の音と、自分の心臓の鼓動だけ。

 

美海はベッドの上で体を小さく丸め、おばあちゃんからもらったお守りをぎゅっと握りしめた。

 

そのお守りは、今まで彼女に安心感を与えてくれたが、

 

今夜はその力も彼女の不安を完全には払拭できないようだった。

 

「暗黒霊…」美海は小さな声でつぶやいた。

 

美海は弥美子との出会いを思い出した。

 

初めて会った日から、二人の間には特別な絆があると感じていた。

 

弥美子は他の誰とも違った、美海にとっては理解し難いけれど、心のどこかで深く信頼できる存在だった。

 

そして美海はふと、おばあちゃんの顔を思い浮かべた。

 

おばあちゃんはいつも優しく、美海がどんなに困った時もそばにいてくれた。

 

もしかしたら、おばあちゃんも何かを知っていたのかもしれない。

 

その夜、美海は何度も目を覚ました。

 

夢の中で暗黒霊に追いかけられる悪夢を見ては、冷や汗をかきながら目を覚ますのだった。

 

それでも、お守りを握りしめる手は一晩中離さなかった。

 

朝が来て、美海はぼんやりと窓の外を見た。

 

不安はまだ残っているが、弥美子との出会いが彼女に新たな勇気を与えていることも事実だった。

 

「弥美子ちゃん…」美海は心の中でつぶやいた。

 

「今日も学校で会えるかな。」

 

美海は深呼吸をして、ゆっくりとベッドから起き上がった。

 

部屋の中は薄暗く、外は星一つ見えないほどの曇り空が広がっていた。

 

彼女が枕元に手を伸ばすと、いつも首から下げているお守りを手に取ろうとした瞬間、

 

何かがおかしいことに気づいた。

 

ひもが切れてお守りが手の中に落ちてきたのだ。

 

その瞬間、不吉な予感が彼女を襲った。

 

何かが間違っている、という言葉にできない感覚が美海を包み込んだ。

 

彼女はその感覚を振り払おうとしたが、心の奥底では、その予感が真実をついていることを知っていた。

 

その時、部屋のドアがゆっくりと開き、母親が入ってきた。

 

母の顔を見た瞬間、美海の心はさらに重く沈んだ。

 

母親の目に宿る悲しみが、言葉を交わさなくても何が起こったのかを伝えていた。

 

母親が静かに言った。

 

「おばあちゃんが…亡くなったそうよ…」

 

その言葉は、美海の心に深く突き刺さり、彼女の世界を一瞬で変えてしまった。

 

おばあちゃんは美海にとって、ただの家族以上の存在だった。

 

いつも美海を励まし、愛情を注いでくれた。

 

彼女の笑顔、優しい声、そして愛情に満ちた抱擁は、美海の心の支えだった。

 

おばあちゃんの死は、美海にとって計り知れない喪失だった。

 

美海は急いで家を出て、おばあちゃんの家へと向かった。

 

道中、彼女の心は様々な感情で溢れていた。

 

悲しみ、寂しさ、そしておばあちゃんとの思い出が交錯する。

 

美海は、この喪失をどう受け止め、どう前に進むべきか、その答えを見つけようともがいていた。

 

おばあちゃんの家に着くと、家族が集まっていた。

 

皆、おばあちゃんを偲び、涙を流していた。

 

家の中は悲しみで満ちており、それでもどこかで家族の絆を感じることができた。

 

「おばあちゃん…」美海もまた、おばあちゃんの遺影の前で涙を流した。

 

彼女はそこに立ちながら、おばあちゃんに語りかけるように囁いた。

 

「おばあちゃん、今までありがとう…。どうか安らかに…」

 

その瞬間、美海はおばあちゃんの温かい存在を側に感じることができたような気がした。

 

それは、おばあちゃんがいつも彼女を見守っているという、確かな信念だった。

 

その夜、美海は再び弥美子と会うことにした。

 

彼女は弥美子におばあちゃんのことを話し、そして暗黒霊の謎についてもっと知りたいと伝えた。

 

弥美子は美海をじっと見つめ、深いため息をついた後で、話し始めた。

 

「美海、実は私たちの出会いは偶然じゃない。私は特別な任務を持ってこの町に来たの。

 

 それは、暗黒霊からあなたを守ること。あなたの家族は代々、人間界と暗黒界を繋ぐ特別な力を持っている。

 

 おばあちゃんもその一人だった。そして、その力はあなたにも受け継がれている。

 

 暗黒霊はその力を欲している。だから、あなたを狙っているのよ」

 

弥美子の言葉は美海にとって衝撃だった。

 

自分が特別な力を持っているなんて、これまで考えたこともなかった。

 

しかし、おばあちゃんのお守りを見ると、何かが納得できるような気がした。

 

「でも、どうして私を守るの?」美海が尋ねた。

 

「もし、暗黒霊があなたの力を奪ったらどうなると思う?」

 

「うーん…」

 

美海は一分間沈黙した。

 

「わかんない」

 

「あら…あまり頭がよくないみたいね、あなた」

 

「うっ…運動神経はいいもん!」

 

弥美子は一笑した後、答えた。

 

「奴らは人間界に大勢入ってくるわ。そしたら人間界は混沌となるわよ」

 

「こんとん…つまり大変なことになるってことね」

 

「そう、大変なことになる。だからこそ、私はあなたを守るためにここにいるの。

 

私たちの任務は、暗黒霊がこの世界に混沌をもたらすのを阻止することよ」と弥美子は力強く言った。

 

美海は深刻な表情で頷いた。

 

「あと…あなたのおばあちゃんは、その霊によって命を奪われたのよ」

 

弥美子の一言に美海は驚きを隠せなかった。

 

「弥美子ちゃん、もっと教えて。どうしておばあちゃんは…?」

 

海の声は震えていたが、その目は決意に満ちていた。

 

弥美子は美海を見つめ、深く息を吸い込んだ。

 

「美海ちゃん、おばあちゃんは君が持っている特別な力を守るために、暗黒霊と戦っていたの。

 

そして、その最終的な戦いで、彼女は私たちを守るために自らを犠牲にしたのよ。」

 

「そうだったの…」

 

衝撃の告白に美海は思わず涙を流した。

 

美海は涙を拭いながら、

 

「おばあちゃん…私も、おばあちゃんみたいに強くなりたい。」

 

と力強く言った。

 

弥美子ちゃんは微笑み、

 

「その意気よ…美海ちゃん。私も協力するから」

 

と答えた。

 

「でもどうやって暗黒霊と戦うの?

 

私には特別な力があるって言ったけど、それをどう使えばいいの?」

 

美海が尋ねた。

 

弥美子は美海の質問に対して、一瞬の沈黙の後、深い呼吸をしてから答えた。

 

「美海ちゃん、毒を以て毒を制す戦略を取るわ。」

 

「毒を持って毒を制す…?」

 

「ええ…暗黒霊を自身の力で倒すのは難しいしかなり危険…

 

 でも、彼らを味方につけて戦うことは可能よ。」

 

「えっ、本当に? 暗黒霊を…味方にするなんて、できるの?」美海の声には驚きと少しの疑念が混じっていた。

 

弥美子は頷き、自信を持って答えた。

 

「ええ、できるわ。私は以前からこの方法を研究していたの。

 

 暗黒霊も、悪しき部分を取り除けば、強力な味方になることができるのよ。」

 

そう言って、弥美子は美海を安心させるように微笑んだ。

 

「…で…あなたに聞きたいことがあるんだけど…」

 

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kindle小説を書いている風神創と申します

こんにちは、amazonkindle本を執筆している風神創と申します。

 

早速ですが、本の紹介をしたいと思います。

 

現在書いている小説

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ジャンルはアクションホラーといった感じです。

8歳の少女美海が暗黒霊と戦います。

 

ヤミノランド2を只今執筆しています、公開日時は未定です。